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末は博士か大臣か

僕の祖父母(明治後半から大正生まれ)がまだ活躍している頃、優秀な子どもは「末は博士か大臣か」などともてはやされていたようですが、昔の時代は「人の成功」と言えば、国や大企業など大きな組織に属して出世していくことと同じ意味でした。

その後、時が流れ、世の中の価値観もずいぶん多様化してきましたよね。
「成功」の定義もまちまち。

「優秀な学生は、もう就職活動でエントリーシートなんか書きませんよ」と聞いた日には世の中変わったなと思いました。

大きな組織に属さなくても、一人で起業し、信頼を得て生きていくという道も随分広がっていますし、それに付随してコミュニティーを作ったり、人に何かを教える「先生ビジネス」とかも流行っています。

「自己実現」の可能性が未だかつてないぐらい広がっている時代です。

僕の棲むコーチング業界もその一つ。

そして、お隣の「セミナー業界」、「コンサル業界」なども同じようなもので、一緒にやってくれている講師の皆さんも、そうした業界で名を残してきた人達が多いです。

僕自身は、大組織から独立して起業するにはしましたが、現在は旧来型の世界、大企業のヒエラルキーを登っている人達のリーダーシップ発揮の支援をしている身です。

そんな感じで、全く方向性が違うのですが、ただ一つ、共有出来る価値観があるから一緒にやっているのだと思います。

それは「(顧客に)先の世界を見せる」という価値観。


企業でもかつては「上」の言うことを忠実に守っていれば出世できた時代があったようです。

でも、もう、そんな人ではこの波高い時代の舵取りはできませんし、株主もそんな生ヌルいことは許してくれません。

リーダーたるもの、自分の足で立ち「先の世界を見せられる人」であることは不可欠であり、僕は対話を通じてその思考の開発に関わっていきます。

また、実感値としては30代から40代までにこうした思考の転換をしていける人は、その後もキャリアもしっかりと形づくられていくようです。


一方で、このような企業組織に属さなくても「自己実現」の可能性が開かれた現代、それを謳って様々なビジネスが立ち上がっています。

もちろん、それに参加した人達の力量が伸び、人格が磨かれ、参加した方々がより自立した精神で他者に関わり、誠実なビジネスが展開されていくのであれば本当に素晴らしいことです。

一方で、なかなかそうなっていない現実については「ねっとりした資格」の記事で述べたとおりです。

私は「先生ビジネス」や「コミュニティビジネス」においても、「先の世界を見せる」というリーダーのあり方、考え方が何よりも大事だと考えています。

ある「世界観」や「人間関係」に一時的に人を惹きつけることはある意味簡単です。

そのような方法論は世の中にいくらでも販売されています。

でも、本当に難しいのは惹きつけ続けること。

それは、顧客にどこまで「先の世界」を見せることができているのかということと密接に関係していきます。

先生ビジネス、コミュニティビジネスは川の流れと同様、停滞すると沈殿し腐敗するという構造上の難しさを持っています。

このあたりのお話は少し長くなりますので、続きはまた明日以降に分析をお届けしていきたいと思います。

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この記事を書いた人

クレメンティア代表世話人及び「西洋哲学塾」塾長。

普段は「エグゼクティブコーチ」として、上場企業から気鋭のベンチャー企業までシニアリーダーのリーダーシップ学習を支援。現代哲学に基づくクライアント自身の視座が上がるコーチングが特徴。「東京哲学会議」特別貢献会員。

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